2008年1月20日日曜日

偽証罪の立件

偽証罪の起訴が10年で5倍になったとの中日新聞の記事(2008.1.20)を読みました。
ちょうど読みかけていた「市場と法-いま何が起きているのか」(三宅伸吾氏著・日経BP社・2007.10刊)のp.117-120でもこの点がとりあげられていました。
この2つの情報を重ねてみて,時系列で並べてみると…

2004   東京地検 飲酒無免許運転の被告の取引業者が身代わり偽証を起訴
2004   京都地検 弁護士が暴力団幹部らによる強盗致傷の被害者と偽証共謀を起訴
2005  東京地検 報酬をもらって被告の婚約者になりすました女性を起訴
2006.05 東京地裁 覚せい剤事件の公判で偽証 懲役1年6月
2006.10 横浜地裁 懲役1年6月
2006.12 東京地裁 耐震偽装建築士が国会で偽証 懲役5年,罰金30万 
2007.01 前橋地裁 窃盗事件の公判で他人が犯人と偽証 懲役1年2月


情状証人のなりすましの件を見て,本当に被告人の関係者かわからない人が情状証人になることを申し出てくることがあるので気をつけようという話を思い出しました。
弁護士も,わざと偽証させるのは論外ですが,だまされないよう気をつけねばと思います。過剰な立件で業務が萎縮させられてはたまりませんが。

ただし,上記の本によれば,これまで偽証罪での起訴が少なかった理由として
「検事も偽証するので,他人を責められないのではないか」
「取り調べ検事はなかなか本当のことを言わないものだ」
との元特捜検事の話を紹介しています。

偽証罪の立件が進むのであれば,自白の任意性を争う手続の中で,捜査機関側の取り調べにおける状況の証言をより真実に近づけてほしいものです。
とはいっても,取り調べの可視化が進めば,任意性判断の有力証拠が法廷での証言から録画映像に変わっていくでしょうから,捜査機関側が偽証罪に問われる場面も減るのではないでしょうか。

裁判員裁判の模擬裁判

1月18日,山口地裁での裁判員裁判の模擬裁判で,弁護人役を担当しました。
書面を見ずに法廷で話す練習をするのに,ちょうどいい機会となりました。
事案は,ひったくり強盗により高齢女性に全治3か月を負わせてしまった共犯事件。
自白事件で,情状弁護がメインです。

模擬裁判を終えた後,もう1人の弁護人役のS先生とどうしたら裁判員にわかりやすく説明できるのか,反省会をしました。

・パワーポイントは,かえって気が散って,内容があたまに入らないと思う(今回は使わなかった)

・箇条書きのレジュメを渡して,それを見てもらいながら冒頭陳述や最終弁論など被告人側のストーリーを聞いてもらう。

・裁判長からは冒頭陳述・最終弁論後に記憶喚起用の文書も渡してはどうかというご意見。

・「初犯」→「刑事事件を起こしたのは初めてで,犯罪傾向が進んだ人とは言えません」
など,いつも使っている言葉をわかりやすい表現・論理に組み替える必要あり。

などなど。

裁判員裁判は「わかりやすさ」を考えざるをえず,
専門的用語がとびかう法廷で被告人にもよくわからないまま刑事手続が終わってしまい,被告人が何を反省したらよいのかさっぱりわからない
…という裁判を少しでも減らすことにはつながるのかもしれません。

先日,日弁連で行われたアメリカから講師を招いての法廷弁護技術研修では,
劇場で話すかのような弁論技術の訓練がなされたと参加者から聞きました。
参加してよかった,弁論術・レトリック術を学ぶ機会があってよかったという話もありました。

私も学ばねばなりません。

ただ,今回の模擬裁判において,裁判官と裁判員が結論を出すために評議をしている様子を見ていたところ(模擬なので特別に見ることができました),裁判員の方々は,

「弁護士の舌先三寸に丸め込まれずに真実を発見し,その上で被告人の処罰を考えたい」

そんな雰囲気で議論しているように見受けられました。

プレゼン技術は必要だと思いますが,やりすぎないよう・ひかれないよう気をつけないといけないのかもしれません。