2010年8月25日水曜日

口座凍結

長門市の日置支所に、無料法律相談の担当として行ってきました。
昨年も私が担当でした。

ご相談の合間に、日置支所御担当の人権擁護委員の方ともお話しました。
高齢者が振り込め詐欺・消費者詐欺で犯罪被害にあったときの取り組みは盛り上がっていますかと聞かれました。

取り組む相談機関はあるけれど(消費生活センター、弁護士会、地域包括支援センターなど)
盛り上がっているのかなあ・・・と、とまどってしまいました。

全国銀行協会のサイトをみると、「預金口座等に係る取引の停止等の措置」についてというpdfファイルがありました。弁護士からの連絡でも口座凍結できる場合があることがわかりました。

この制度を使えそうな事案があったら使ってみようと思います。

http://www.caa.go.jp/planning/pdf/100129-3-2.pdf


「預金口座等に係る取引の停止等の措置」について
 法第3条第1項を踏まえ、以下の1~4のいずれかに該当する場合は、すみやかに口座凍結を実施(預金口座に係る取引の停止等の措置)
※ 口座凍結は、口座への入出金双方の停止(解約を含む)
※ 僚店を含め同一名義人の口座がある場合には、利用実態を確認のうえ、必要がある場合には同様の措置を実施
※ 1~4に該当しないケースでも、疑いがあると認められる場合には、個別事例に即して柔軟かつ適切に措置を講ずるよう努める

1.捜査機関、弁護士会、金融庁および消費生活センターなど公的機関ならびに弁護士、認定司法書士から通報があった場合

2.被害者から被害の申し出があり、振込が行われたことが確認でき、他の取引の状況や口座名義人との連絡状況から、直ちに口座凍結を行う必要がある場合

3.口座が振り込め詐欺等の犯罪に利用されているとの疑いがある、または口座が振り込め詐欺等の犯罪に利用される可能性があるとの情報提供があり、以下のいずれかに該当するとき。
(1) 名義人に電話で連絡し、名義人本人から口座を貸与・売却した、紛失した、口座開設の覚えがないとの連絡が取れた場合
(2) 複数回・異なる時間帯に名義人に電話で連絡したが、連絡が取れなかった場合
(3) 一定期間内に通常の生活口座取引と異なる入出金、または過去の履歴と比較すると異常な入出金が発生している場合

4.本人確認書類の偽造・変造が発覚した場合

2010年8月16日月曜日

ミシン

亡祖母の形見にと、
祖母が使っていた足踏みミシンを頂きました。

戦時中に空襲で何もかも失った後に、
父親が無理して嫁入り道具をそろえてくれた
・・と、祖母が話してくれていたので、そのときのものだとすれば60年ほど前のものです。

SINGERミシンではなく、「THE NIPPON」とロゴが入っています。
壊れていたので、
長府にある「ミシンのエモト」さんに直して頂きました。
ミシン本体の手直しだけでなく、
壊れてばらばらになりそうな、ミシン台も直して下さいました。
引出しも出しやすいようにシリコンを塗って下さり、すばらしい修復ぶりです。

足踏みミシンだから電気を使わないで便利。
というのはいいのですが、
足踏みで動かすのは結構難しいです。
リズムを体で覚えるしかありません。
油断すると、逆送しはじめます。

ミシンが逆送すると、機械にも悪いし、糸も切れてしまうので
いまは前に前に縫えるように、足踏みの練習をしています。

足踏みミシンで、こつこつ縫う練習をしていると、
集中力が戻ってくるので、仕事の合間の気分転換にぴったりです。

エモトさんのお話によると、
戦時中は鉄砲などの兵器を製造していた工場が、戦後を迎えて平和産業に転換する際に
ちょうど兵器製造ラインがミシン製造ラインに切り替わったのだとか。
「『JUKI』という会社の名前は、『重機』からきているんですよ」
とのこと。

昔のミシンの構造はシンプルなので、今でも手入れが出来るそうで
おかげで、戦後すぐのミシンがよみがえりました。

2010年7月25日日曜日

労働審判制度5年目

日弁連主催の
労働審判制度5年目記念シンポジウム「労働審判制度の成果・課題・展望」を、日弁連パソコン会議システムで見ました。

東京で行われるシンポジウムも、インターネットの技術で下関にいながら視聴できるのがすばらしい。

シンポジウムのコーディネーターは、恩師の菅野和夫先生。
久しぶりにお姿を拝見・・と思いきや、
動画の解像度が荒く、全然顔がわからない。まだまだシステムは残念な技術です。
お元気そうなお声だけうかがいました。


労働審判制度は、労使紛争を3回以内で解決をめざす、画期的な制度です。
年間1500件程度の申立てが想定されていたのに、平成21年度で3000件を超える相談がきたとのこと。
全国的には、大変重宝がられている結果がでています。


しかし、山口では、7~8件を推移し、昨年は15件。

少なすぎます。

労働審判は山口本庁のみで実施されています。
下関、宇部、周南、岩国、萩では実施されていません。
せめて、下関や周南で実施してくれればもっと利用しやすくなるのに、困ったことです。


何か労働審判制度利用促進キャンペーンでも行わないといけない。

とりあえず、法テラスで弁護士費用を援助してもらっても交通費までは援助してもらえないので
交通費援助など行ったら、多少は使い勝手があがるのではないでしょうか。l

2010年3月19日金曜日

ある臨終の場

今年3月、母方の祖母が亡くなりました。
帰省する時間を確保するため、関係者のみなさまにはたくさんのご配慮をいただきました。
ありがとうございました。

危篤状態の祖母と一緒に2日間を病室で過ごしました。
病院には治療を尽くして頂きましたが、それでも驚かざるをえない点がいくつもあったので書いてみます。

例えば、
救急患者を拒否しない市立病院(他県です)だったので、入院はさせてもらっていましたが
わたしが23時ころに病院に到着すると、
病室の開きがないということで、入院棟の診察室にベッドが置かれていました。

隣はナースステーションです。
申し送りなどの打ち合わせの声や雑談も聞こえてきます。
照明を消しても、隣の部屋からの明かりが漏れ、まさに祖母の顔を照らすため、真っ暗になることはありません。
室温も湿度も管理できない部屋でした。

付添をしていた私自身、息苦しさを感じました。
親族は個室に移して上げたいと思っていましたが、個室はありませんでした。

急性肺炎を起こしていた祖母は、意識が混沌としてはいましたが、どう考えても通常の体調でもゆっくり眠れる環境ではなく、症状の進行もあると思いますが、次第次第に睡眠不足ゆえの疲労が色濃くなっていくことがわかりました。

次に搬送された方には、もう入る部屋がなく、入院患者さんの食堂にベッドが置かれていました。


翌朝、一度、小康状態になり、4人部屋に移されました。
しかし、その日の夜に再び危篤状態になり、あの診察室に戻されました


明け方、祖母が亡くなりました。


看護師さんからは

「入院患者さんに動揺を与えるわけにはいきませんから、みなさんが起き出す前に、葬儀会社と連絡をとって、ご遺体を病院からだしてください。」


しかし、親族で打ち合わせをしようにもその部屋がありません。
唯一、それができそうな食堂には、再び別の患者さんが搬送されて、寝ておられるのです。

仕方なく、病院の廊下で打ち合わせをしていると

「声が響いていますよ。静かにしてください」

「それで、葬儀会社は決まりましたか」

たたみかけられる言葉に、だからといって、何かをいう言葉を思いつく余裕はないのです。
親族たちで、とにかく、声がひびかなそうな場所を探して、葬儀会社さんにご連絡をしました。


「みなさん、1階の霊安室に行って、待っていて下さい」


看護師さんから、そう指示があったので、8階の入院棟から1階におりて霊安室のドアの前で、
祖母が連れられてくるのを待ちました。

すると、30分以上待っても誰も来ません。

霊安室という場所柄、居心地が悪く、親族達と話しました。

「ここにいるのはなんだか気味が悪いよね。どうなったのか8階に行ってきいてこようか」

8階に行くと、
今度は、看護師さんが、不機嫌な様子で腕を組んで立っていました。

「仏さんを放っておいて、どちらに行ってしまったんですか。」


さすがに、看護師さんの指示を受けて霊安室の前で待っていたのですよと指摘しました。


親しい人を亡くしたばかりで、どうしてこんな釈然としない扱いが待っているのか。
不思議でなりませんでした。

せめて、祖母の臨終に間に合ったことだけでもよしとしようと言い合いながら、葬儀を終えたのでありました。

2010年2月13日土曜日

22週

「インドでは、出生前性別診断が法律で禁止されています。
女の子とわかると、女の子は嫁入持参金(ダウリー)で家計が壊れるとの理由で、堕胎の対象にされやすいから。」

という話を、インドに赴任した友人から聞きました。
インドのプラティパ・パシル大統領も女児中絶を追放するとわざわざ宣言しているので、日常化しているようです。

インドは中絶が広く実施されている国のようです。

日本では、母体保護法に基づく人工妊娠中絶が許容されています。
妊娠週数22週までは。

ちなみに、母体保護法をよく読むと、「22週」という数字はでてきません

母体保護法2条2項「この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出することをいう。 」

の「生命を保続することのできない時期」の解釈を厚生省事務次官の通知で規定しているのです。


昭和53年11月21日付け厚生省発衛第252号厚生事務次官通知
(従来の「通常妊娠第7月未満」を「通常妊娠満23週以前」と表現を改めた)
(参考・沖縄県平成15年衛生統計年報


医学の進歩によって、早産の胎児の生存可能性が年々高まっているので
法律では具体的な数字で規定していないのでしょう。

事実婚形態の別姓夫婦の審判例(親権は母が、名字は父が)

●子の氏の変更許可申立却下審判に対する抗告事件(札幌高裁平成20年1月11日決定、原審判取消・申立認容(確定)家月60巻12号42頁、解説家月62巻1号44頁)

・両親は法律婚を選択していない
・親権者は母
・父は認知済み
・子どもの「氏」(名字)は父の「氏」で

という内容の別姓結婚を希望するご夫婦の事件です。

第一子は、
1 出生(母の「氏」で出生届。母を筆頭者とする戸籍に記載される。)
2 父が認知(母の「氏」のまま。)
3 民法791条1項に基づき家裁の許可を得て、子どもの「氏」を母の「氏」から父の「氏」に(父の「氏」に変更。戸籍は戸籍法18条2項に基づき、父の「氏」を称するので、父の戸籍に入る)

という手続を経て、父の氏を称しています。親権者は母のままで。

ところが、第二子は、「3」の民法791条1項の家庭裁判所の許可が原審では得られませんでした。
子の氏の変更許可審判申立ては却下されたのです(札幌家庭裁判所平成19年6月19日審判)

原審は民法791条1項の許可の判断基準について、
「原則として認められるべきものであるとはいえ、少なくとも、変更することに合理的な事情の存することが必要であると解され、恣意的であったりあるいは濫用となるような場合には許されないといわざるを得ない。」と述べた上で、合理的な事情がないと結論づけています。

その理由は、
・認知しているが親権者が母である
・親権者は未成年者の監護養育の法的責任全般を負っている
・父母らと一緒に生活しているものであることからすると、申立人が父と同居するのに格別支障となるような事情が存するとは窺われない
・あえて変更しなければならない合理的な事情はない
というものです。

民法791条1項では特に親権者が父母のどちらであるかを考慮するような規定はされていませんが、この原審判では、親権者が母であるということを重視しています。

例えば、全く別のケースで、両親が離婚して母親が旧姓に戻り、子どもの親権は母親がとった場合、子どもの氏を父の氏から母の氏に変更するため、民法791条1項に基づいて、この手続が使われます。このとき、実務上、親権を得た母と同一の氏に統一するためであるとの理由のみ記載しています。

「親権者と同一の氏への変更を認める」というのは民法791条1項の適用方法として定着していると思われます。
しかし、「親権者と異なる氏への変更は認めない」という理屈にはならないはずです。

かりに、親権の内容に「同一の氏を称することを求める権利」を含むと考えたとしても、権利者である親権者が権利行使を望んでいないときにまで家庭裁判所が同一の氏を称することを求めるだけの根拠が必要です。


この原審は札幌高裁で結論が覆りました(札幌高等裁判所平成20年1月11日決定)


高裁は、民法791条の趣旨について、「民法790条により形式的基準でいったん定まった子の氏につき、主として共同生活を営む親子間で氏を同一にしたいとの要請に配慮して、その他の利害関係人の利害感情も考慮の上で、家庭裁判所の裁量により他方の氏への変更を認めるところにある」と述べた上で、次の事情を検討しています。

・父母は長年の事実上の夫婦。共同生活を送っている。
・第一子は、父認知後、家裁の許可を得て父の氏を称している
・兄弟で戸籍上の氏を異にするのは望ましくない
・父には現在も過去も法律上の婚姻関係が存在せず、母以外の者の利益を害するおそれがない

具体的に利益衡量を行い、親権者が母である点については「氏の変更は親と共同生活を営む子の社会生活上の必要性から認められるものであり、親権者が母のままであることは、非嫡出子が、その氏を、共同生活を営む父の氏に変更することを妨げる事由とはなり得ない。」と判断し、原審を否定しています。


これまで「嫡出子でない子が認知した父の氏に変更」する手続は、父に母とは別の法律上の妻がいる場面で多く使われてきました。

この場合の審判例を梶村太市先生は「子(嫡出でない子)の利益重視型」「正妻の意向尊重型」「総合判断型」の3類型にわけ、昭和50年代以降は、総合判断型が増えていると指摘しています。
そして、澤田省三先生は、「新家族法体系」(新日本法規)において、

「子の氏変更は甲類審判事項であり当事者の紛争性が予定されていない事項」との前提の下、家裁の役割は利害の調整ではなく、「氏の変更が子の福祉に反しないか否かの後見的に判断にあるとみるべきではないか。嫡出家族の保護の問題はそれにふさわしい手続で調整されるべき」と指摘しています。
また、「戸籍の表示の方法とかその社会的利用度に対する過剰な思い入れについての検証の必要性」についても指摘しておられ、戸籍が原則非公開化されている現代で、「戸籍上の問題をこの問題の判断基準として用いることは既にして妥当性は失われているとみるべき」と論じています(「新家族法実務体系2」第4 氏名・戸籍・国籍 35子の氏の変更 p.583/新日本法規/H20.2.22刊)。


本件審判は、まさに「子の氏」の問題は「子の福祉」に沿って判断されるべきとの観点で説明することができます。
別姓婚を選択するなどの新しい家族観が育ってきた現代において、家裁は、当事者の価値観を重視しながら公権力を行使する必要がありますが、その中で、「子の福祉」は誰も無視できない思想として、利益衡量の核心にすえるべき基準と考えられています。妥当だと思います。

ただし、「母以外の者の利益を害するおそれがない」との利益衡量がなされていますので、重婚的内縁関係事案においては、本件審判を引用しても直ちに子の氏の変更が認められるとは限らず、これを補充する事情をさらに主張立証する必要があると思われます。

2010年2月7日日曜日

さようなら青山堂書店

下関に引っ越してきてから、この5年通ってきた
綾羅木の青山堂書店さんがお店を閉じてしまいました。

ご主人の独自の本棚作りが、とても好きでした。
毎回棚に並ぶ本の顔ぶれはかわっていました。

小説、哲学本、歴史本、岩波文庫、講談社学術文庫などの棚で立ち読みし、
どれを買おうか、棚と棚の間をぶらぶらしながら考えるのが
大事な気分転換でした。

最近は、
海岸線の歴史」(松本健一著、ミシマ社)
諸国物語」(ポプラ社)
英語の冒険」(メルヴィン ブラッグ著、講談社学術文庫)
海の都の物語(1)-ヴェネツィア共和国の一千年」(塩野七生著、新潮文庫)

など買っていました。

次にきたら、これを買おうと思っていたものもありましたが、
お店をおやめになられてしまったので、買わないままの本がいくつか残ってしまいました。

いままで、すてきな本を薦めていただき、本当にありがとうございました。



下関には売場面積の広い書店がいくつかできましたが、
何度も行きたい本屋になるかどうかは、書店店員の棚作りのやる気・レベル次第です。

下関図書館も今度新しくできるようですが、リクエストかけるなどして、いい図書館にしていきたいです。
レファレンスの力のある職員の方が常駐してくださいますように。