2010年3月19日金曜日

ある臨終の場

今年3月、母方の祖母が亡くなりました。
帰省する時間を確保するため、関係者のみなさまにはたくさんのご配慮をいただきました。
ありがとうございました。

危篤状態の祖母と一緒に2日間を病室で過ごしました。
病院には治療を尽くして頂きましたが、それでも驚かざるをえない点がいくつもあったので書いてみます。

例えば、
救急患者を拒否しない市立病院(他県です)だったので、入院はさせてもらっていましたが
わたしが23時ころに病院に到着すると、
病室の開きがないということで、入院棟の診察室にベッドが置かれていました。

隣はナースステーションです。
申し送りなどの打ち合わせの声や雑談も聞こえてきます。
照明を消しても、隣の部屋からの明かりが漏れ、まさに祖母の顔を照らすため、真っ暗になることはありません。
室温も湿度も管理できない部屋でした。

付添をしていた私自身、息苦しさを感じました。
親族は個室に移して上げたいと思っていましたが、個室はありませんでした。

急性肺炎を起こしていた祖母は、意識が混沌としてはいましたが、どう考えても通常の体調でもゆっくり眠れる環境ではなく、症状の進行もあると思いますが、次第次第に睡眠不足ゆえの疲労が色濃くなっていくことがわかりました。

次に搬送された方には、もう入る部屋がなく、入院患者さんの食堂にベッドが置かれていました。


翌朝、一度、小康状態になり、4人部屋に移されました。
しかし、その日の夜に再び危篤状態になり、あの診察室に戻されました


明け方、祖母が亡くなりました。


看護師さんからは

「入院患者さんに動揺を与えるわけにはいきませんから、みなさんが起き出す前に、葬儀会社と連絡をとって、ご遺体を病院からだしてください。」


しかし、親族で打ち合わせをしようにもその部屋がありません。
唯一、それができそうな食堂には、再び別の患者さんが搬送されて、寝ておられるのです。

仕方なく、病院の廊下で打ち合わせをしていると

「声が響いていますよ。静かにしてください」

「それで、葬儀会社は決まりましたか」

たたみかけられる言葉に、だからといって、何かをいう言葉を思いつく余裕はないのです。
親族たちで、とにかく、声がひびかなそうな場所を探して、葬儀会社さんにご連絡をしました。


「みなさん、1階の霊安室に行って、待っていて下さい」


看護師さんから、そう指示があったので、8階の入院棟から1階におりて霊安室のドアの前で、
祖母が連れられてくるのを待ちました。

すると、30分以上待っても誰も来ません。

霊安室という場所柄、居心地が悪く、親族達と話しました。

「ここにいるのはなんだか気味が悪いよね。どうなったのか8階に行ってきいてこようか」

8階に行くと、
今度は、看護師さんが、不機嫌な様子で腕を組んで立っていました。

「仏さんを放っておいて、どちらに行ってしまったんですか。」


さすがに、看護師さんの指示を受けて霊安室の前で待っていたのですよと指摘しました。


親しい人を亡くしたばかりで、どうしてこんな釈然としない扱いが待っているのか。
不思議でなりませんでした。

せめて、祖母の臨終に間に合ったことだけでもよしとしようと言い合いながら、葬儀を終えたのでありました。