下関シアターゼロへ「12人の怒れる男」を
見に行きました。
裁判員制度がもうじきはじまるので,ヘンリー・フォンダの演技を見ておこうと思っていたのです。
が。
映画が始まってみたら,ロシア語,ロシア人,しかも映像はカラー。
陪審員たちは最初に携帯電話が回収され,評議室はぼろぼろの小学校の体育館。
うっかりしていましたが,
これは,現代ロシアで再構成された12人の怒れる男でした。
しかし,勘違いのおかげで素晴らしい映画を見ることができました。
長台詞など舞台劇を意識していると思われる演出で,
ロシアに置き換えた民族差別問題や
マフィアやチェチェン紛争といった現代ロシアの社会問題も織り交ぜて
オリジナル版とは全く異なった作品に仕上がっていました。
合理的な疑いを超える証明があったか。
陪審員の議論の対象は,この証明ができているかどうかです。
しかし,かれらは,一筋縄ではいかない。
本件事件の内容になかなか入ってくれません。
陪審員の人生がとにかく語られます。語り尽くさないと心が議論に向かないのです。
ピアノはかき鳴らされ,カフカスの踊り,そして喧嘩。
なんとも激しい評議でした。
業務に関わる点で刺激を受けたのは,
1.やる気のない弁護をすると,陪審員もやる気のない議論しかしてくれない
…恐怖を感じました。しっかり仕事しないと。
2.判決を出せば「解決」なのか。
…この映画の一番の核心です。全ての法曹関係者の尽きせぬ悩みでもあります。
映画のパンフレットを後で読み直すと,
チェチェン紛争や監督の政治的背景にも触れられていました。
いい映画に出会えました。