2012年1月25日水曜日

家事事件弁護士ヒヤリング

先日書いた「親子の面会交流を実現するための制度等に関する調査研究報告書(法務省:研究代表者棚村政行早稲田大学教授)」を読み進めています。

Ⅳ 家事関係弁護士ヒヤリング
Ⅳ-1 面会交流の現状と特色・課題
Ⅳ-2 共同親権・面会交流について
Ⅳ-3 面会交流の現状・問題点について

http://www.moj.go.jp/content/000076566.pdf

ここで、大阪弁護士会の片山登志子先生のご報告(Ⅳ-1)をご紹介します。

(3) 双方の親の子に対する気持ち、認識

別居中はいまだ離婚自体が不確定な状態であり、両親ともに将来像が見えていない時期であるため、共通の目標で物事を考えるという気持ちになりにくく、対立的な意識状態になりがちであるので、別居中の子どもに対して何が一番重要であるかについての両親の認識に齟齬を生ずることが多い。たとえば監護親(母)は、ようやくにしてもんだ因おある生活から脱出したのだから、母子2人の生活を安定させたい、あるいは、必死になって暴力家庭から脱出して、子どもを落ちつかせようとして、経済的にも必死になっているから、子どもに父親の影を見せたくないという意識が強くなる。しかし、このような意識は、子どもに対して、両親の別居の時期に何をしてあげることが重要であるか、という認識が欠如しているといえる。

(4)双方の親が、子が親にどのような気持ちを持っていると理解しているか

監護親は、子どもが自分と同じ気持ちでいてくれていると誤った確信をしていることが多い。すなわち、たとえば、子ども自身は、母親に暴力を振るった父親であっても、自分にとっては大切な父親であり、その父親からの愛情を望んでいるといわれている。このような子どもの真の気持ちを監護親が理解することは難しい。結局、子どもの気持ちを素直に考えられるか否かということが、面会交流を実現するにあたっての一番の要である。


面会交流の方針を考える上で、参考になります。


とはいえ、代理人が依頼者に対して「さあさあ会わせましょう」と矢継ぎ早に説得すればいいわけでもない。
客観的証拠の有無にかかわらず、DV被害をうけていた方の場合には、代理人弁護士は、

「自分がこのお客様の次の支配者になってはいけない」

ということを第一に考えておく必要があります。

お客様と何度もよく話し合いながら方針を考えていかないと、弁護士との関係も、面会交流実施のための準備も、何もかも台無しになってしまいます。

また、「これまで子どもを会わせないあなたを『悪い親』と責めているわけではなく、今後のお子さんのために今からできることとして面会交流という方法をとりいれませんか」ということや

「『お子さんのため』の話をしているが、あなたの恐怖や不安を『どうでもいい』と思っているわけではない」ということを何度でもお伝えしながら、お客様とお話をしています。

もしもこのブログを、面会交流を悩んでいる方が読んでくださっているのであれば

「お子さんは、幼くてもあなたとは別の人間であって、お子さんがどうしたいか・どう思っているかはお子さんだけのものであって、お子さんがあなたの配偶者(または元配偶者)に会いたいかどうかは、会わせてみないとわからない」

ということをじっくり考えていただければと思います。

誰しも、幼い頃の自分を思いだすと、両親がいろいろバトルをしていても、両親それぞれに対する自分の気持ちは、両親の意見とはまた別だったなという感覚があるはずです。

とはいえ、不安が残ったままでは動けません。

不安の原因をよく確認し、取り除けそうかどうかよく話し、階段を一段ずつのぼるように、「これならできそう」「このまえこれができたのだから、次はこれができる」と自信を深められる方法で進めていくと、不安で凝り固まった心もときほぐせるようです。


かなりトラブルが深まってしまった当事者間における面会交流の事件には、ぜひ弁護士がついてほしいです。
どちらにも代理人がいて、その代理人が面会交流を丁寧に行うことを理解していれば、子どもと別居親が会うきっかけを見つける時間は早まると思います。

正直言うと、法テラスさんには面会交流事件の着手金報酬金を底上げしてほしいです。
いまはまだ面会交流事件に取り組んだ弁護士のボランティア的な仕事に頼っており、離婚とは別の「面会交流事件」を扱う弁護士層が広がりにくい状態なのでありました。