2009年6月8日月曜日

【離婚事件】うつ病治癒可能性と婚姻関係の破綻

別居して長い時間が経過すると、関係の回復は次第に難しくなっていくと思うのですが、名古屋高裁で興味深い判決がでていました。

別居から3年3ヶ月の夫婦について、妻のうつ病が治癒し、あるいは妻の病状について夫の理解が深まれば婚姻関係は改善することも期待でき、いまだ破綻しているとまではいえないとして、夫の請求を認容した原判決を取消し、請求を棄却した事例
【名古屋高裁平成20年4月8日判決(家裁月報61巻2号241頁)】

別居期間だけで婚姻関係が破綻したとは認定せず、

夫が離婚を考える原因となった妻の言動はうつ病の影響を受けたものである可能性があるのであるから、妻の治癒を待ち、妻の病気の影響を取り除いた状態で、夫に妻と子どもとの今後の家族関係、婚姻関係に向き合う機会を持たせることが相当

としています。

妻が苦悩した原因は「嫁いびり」にあるようで、
妻側の代理人は「姑が嫁いびりをし、その結果夫婦に不和が生じた場合であるから、姑による嫁いびりは、夫の有責性として評価されるべき」と主張しています。
ただし、名古屋高裁は破綻していないと結論づけたため、有責性判断に関わる事情となる「嫁いびり」についての事実認定はしていません(原審では詳細に認定をしています)。

なお、本件では次の事情がありました。
・婚姻期間6年
・別居期間3年3ヶ月(27歳~30歳)
・未成熟子あり


…病気さえ理解できれば、心を傷つけた言動を許し、かつ、再び愛せるのかと問われると、正直疑問は感じます。そうなるかもしれないし、そうならないかもしれない。
まあ、「法的な離婚請求を認めるか否か」という判断の中での言及に対し、現実からのつっこみを入れても仕方ないところなのですが。