2008年4月27日日曜日

モリのアサガオ

郷田マモラさんの「モリのアサガオ」を読みました。

新人刑務官が異例の配置で死刑囚担当となる話です。
彼は死刑囚担当になったことにとまどい悩みながら
死刑囚1人1人の人生を受け止めていきます。

被害者遺族の気持ちを考えると死刑制度は必要。
真に反省悔悟しても死刑にしなければならないのか。
冤罪の人を死刑にしなければならないのか。

一筋縄でいくはずもない死刑囚たちに対して,
あきらめることなく彼らの内面を考えようとするところに
共感しながら読みました。
刑務官の方々の悩みに近づけるような作品でした。

死刑制度については,折に触れて意見を求められます。
光市事件の判決があったこともあって,考えざるをえない気持ちです。

でも,いつも考えがまとりません。
自分の家族が被害者だったら死刑廃止といえるのか。
そこから動けないのです。

しかし,自分が死刑の可能性のある被告人の弁護を担当したら。
無期懲役判決ではなく死刑判決が下されれば,
弁護の甲斐なく死刑となったことを悔やみ,
自分が被告人の首に縄をかけたも同然だと,きっと思うことでしょう。

死刑制度を続けるということは,死刑を執行するまでの間に
何人もの役職者が,1人の人間を殺す過程に関わります。
その点を横において死刑制度を考えるわけにはいきません。

とはいえ,その点だけで死刑についてのこたえはでません。
人は人を殺していいのか,人を殺した人を社会はどう扱うべきか
根本的な問題が残るからです。
こたえは出ないのかもしれません。

せめて,死刑は慎重に執行してもらいたく,また,
再審の要件を緩やかにしてもらいたいものです。