今月は,氷室冴子先生が亡くなられたとの報せに大きくショックを受けています。
「銀の海 金の大地」の新作が刊行されなくなってから約10年。
どうにも待ちきれず,出版関係の友人の人脈で調べてもらおうと思った矢先の訃報でした。
少女小説で人気
一世を風靡
などのタイトルがつけられ,訃報は比較的大きめの記事となりました。
しかし,これらのタイトルにはぴんときません
氷室先生の作品のカテゴライズの設定が狭すぎます。
作品をまったく読んでいない記者がお書きになったのでしょう。
たくさんの女たち男たちを描いた氷室先生。
どの人々も魅力がありました。
瑠璃姫のようにがむしゃらに動き,
北里マドンナの麻生野枝のように自分の視点を持ち,
銀の海金の大地の佐保彦のように自分のコンプレックスとたたかい,
いつかは蕨が丘の小梅ばあさんのような楽しい老後にたどりつきたい。
幼い頃から,どれだけ,その作品世界に育てられてきたことか。
氷室先生が作り上げた人物は,生活や人生の折り目ごとに自分の中によみがえります。
氷室先生が,小梅ばあさんの舞踏会の手帖よろしく,
昔の知己を訪ねるエッセイをぜひとも読みたかったです。